FX 新興国通貨取引のリスクについて
新興国通貨共通のリスクについて
当社取扱通貨のうち、いわゆる新興国通貨に分類されるトルコリラ・南アフリカランド・メキシコペソ・中国人民元およびロシアルーブルはインターバンク(銀行間為替市場)における流動性が主要国通貨に比べ相対的に低く、経済指標発表のみならず金融政策変更やその他政治的要因、さらには地政学的リスク等の要因による突発的な相場急変動が起こりやすい環境下にございます。
また、こうした急変動時には実勢インターバンクレートのスプレッド(BidとAskの差)も平常時に比べ大幅に拡大する傾向にあり、その場合には当社でもやむなく提示スプレッドを一時的に拡大することがございます。あわせて、相場状況により「ダイレクトカバーの対象となる注文」の基準Lot数(最低数量)を一時的に変更する場合がございますので、あらかじめご承知おきくださいますようお願いいたします。
これら新興国通貨のお取引、およびこれらを対象とするキャンペーンへのご参加に際しては、以上につきあらかじめご留意のうえ、ポジション保有時、特に法人会員様の高レバレッジ取引における口座管理には十分ご注意くださいますようお願い申し上げます。
以上の新興国通貨それぞれのリスク、および直近時点でのリスクレポートにつきましては、後述する「当社にて取り扱う新興国通貨それぞれのリスクについて」をご参照願います。
新興国通貨が高金利である理由について
新興国に分類される国々は概して政治リスクや財政リスクが先進国よりも高く、したがってその経済的信用度は相対的に低い水準にあります。こうした条件下では海外投資家の資金を呼び寄せられず、経済発展の支障となるため、金利を上げたり税金を安くしたりすることで、信用度の低さを補いうる投資環境を構築しようとします。そのため新興国通貨は一般に先進国通貨よりも高金利となる傾向にありますが、前述したように各種リスクが高い水準にあることから、長期的には先進国通貨に比べて価値が下がる(=通貨が下落する)条件を備えているともいえます。
当社にて取り扱う新興国通貨それぞれのリスクについて
- はじめに
- トルコリラ相場は、国内の経済情勢や政治情勢のほか、近年では外交問題が変動要因となる傾向もある。
リスクとして意識しておきたいものは以下のとおりである。 - 政治
- 2016年7月には軍の一部によるクーデター未遂事件が発生した。その後、2018年6月の選挙でエルドアン大統領が再選し、権力が集中した。クーデター未遂やシリア内戦を巡る問題で、軍事同盟国である米国との関係は悪化し、2018年には関税の応酬に発展した。対ロシア関係は2015年のロシア空軍機撃墜事件で一時悪化したが、対米関係の悪化とともに改善傾向にある。
さらに近年では、トルコは国内の経済問題や人権問題に対しても国際的な批判を受けています。2023年には大統領選挙が行われ、エルドアン大統領が再選されましたが、選挙の公正性についても議論が続いています。トルコの対外政策は引き続き注視が必要です。 - 金融政策
- エルドアン大統領による利下げ圧力がきつく、中央銀行の独立性が脅かされている。
実際、過去にトルコ中銀が利上げを見送り、通貨が急落したことがある。 - 経済
- 高インフレが続いており、対外債務も大きいなど、早期に解決できない課題がある。
また、海外からの資金流入に頼る状態が続いている。
民間企業が抱える外貨建て債務は2018年3月時点で4666億ドルとも言われている。 - 地政学
- トルコは依然として地政学的リスクを抱えている。シリア内戦の余波や、シリアからの難民の流入は依然として大きな課題だ。また、トルコ軍はシリア北部におけるクルド人民防衛隊(特にYPG)との衝突を続けており、これが地域の不安定要因となっている。
さらに、トルコ国内では、クルド労働者党(PKK)との長年にわたる紛争が継続しており、国内外のテロの脅威が存在する。トルコの地政学的リスクは、ロシアやウクライナとの関係、イスラエルとパレスチナの紛争、東地中海におけるエネルギー資源を巡る緊張、ギリシャとの領土問題など多岐にわたる。
<特別レポート> トルコリラ 押さえておきたいリスク

トルコでは、一昨年の選挙を経て誕生した経済チームの下、財政・金融政策の両面で「正統的」な政策運営が図られてきた。結果、インフレは昨年半ばを境に頭打ちするとともに、実質金利(政策金利-インフレ率)もプラスに転じるなど、金融引き締めの度合いが強まる動きが確認された。さらに、引き締め政策の長期化により景気も頭打ちするなど、インフレ鈍化を促す動きがみられた。そのため、中銀は昨年12月に利下げに動き、その後も計3会合連続の利下げを決定するなど、政策転換を進めてきた。しかし、3月末のイマモール・イスタンブール市長の逮捕をきっかけに、金融市場ではエルドアン政権が強権姿勢を強め、中銀も再び利下げ圧力に晒されるとの懸念が強まり、リラ相場は調整した。その後のリラ相場は、当局による事実上の為替介入や資本規制を通じて落ち着きを取り戻しているものの、先行きも政治的な不透明感が相場の重石となる展開が続く可能性はくすぶることに留意する必要がある。
執筆:2025年4月22日
マーケット情報
- はじめに
- メキシコペソ相場は、国内の政治情勢や経済情勢だけでなく、主要輸出品である原油の価格動向にも左右されやすい。
また、良くも悪くも米国の動向に影響を受けやすい。
リスクとして意識しておきたいものは以下のとおりである。 - 政治
- 2018年7月の選挙で当選したロペス=オブラドール大統領(当時)は、過激な主張で大衆の支持を集めたが、当選後は比較的穏当で現実的な政策を打ち出した。
また、治安問題や経済改革など多岐にわたる課題に直面した。
2024年10月から、クラウディア・シェインバウム氏が初の女性大統領として就任した。 - 経済
- メキシコの輸出はその8割が米国向けと、経済の対米依存度が極めて高い。
このため、米国の通商政策が依然として不透明な点は大きなリスクと言える。
2017年実質成長率は2.0%と新興国としては低い伸び。
ただ、メキシコ中銀はペソ相場の下落やインフレ高止まりを警戒して政策金利を引き下げられないでいる。 - 原油
- 2024年のNY原油(WTI)は70ドル台から80ドル台のレンジで推移した。メキシコ経済はエネルギー輸出による収益の増加を享受し、リラ高になると言われているが、明確な相関性は見られなかった。
<特別レポート> メキシコペソ 押さえておきたいリスク

メキシコ経済は、財輸出の約8割を米国向けが占めるなど米国経済への依存度が極めて高く、米トランプ政権による関税政策の動向に揺さぶられる展開が続いている。米トランプ政権が同国からのすべての輸入品に25%を課すとした追加関税は、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の対象品目への発動が延期されており、最悪の事態は免れている。ただし、自動車、鉄鋼製品、アルミ製品に対する追加関税はすでに発動されており、これらの輸出の大部分を米国向けが占めるなかで、実体経済への悪影響は避けられない状況が続いている。その一方、関税政策に伴うインフレ抑制を勘案すれば、米ドル高を志向するとみられる。しかし、現実には関税政策が二転三転するなかで米ドルに下押し圧力が掛かっており、足元のペソ相場は底堅い動きをみせている。今後のペソ相場についても、米トランプ政権による関税政策をはじめとする政策動向の影響を受ける展開が続く一方、実体経済の不透明さが相場の調整を招く可能性に留意する必要がある。
執筆:2025年4月22日
マーケット情報
- はじめに
- 南アフリカランド相場は、国内の政治や経済の影響で変動するほか、
金やプラチナなどの貴金属の産出国である事から、これらの価格と連動しやすい。
リスクとして意識しておきたいものは以下のとおりである。 - 政治
- 南アフリカでは2024年5月29日の総選挙で、与党アフリカ民族会議(ANC)が初めて過半数を割り込んだ。ANCは約40%の得票率となり、民主同盟(DA)などの野党と連立政権を樹立し、シリル・ラマポーザ大統領が続投となった。新政権は汚職、経済低迷、治安悪化といった課題に直面しており、今後の政権の安定性と改革の実現が重要な焦点となる。
- 経済
- 2024年第1四半期の南アフリカのGDPは前期比0.1%減少し、市場予想を下回った。鉱業と建設部門の低迷が主な原因。過去10年間、計画停電や高い失業率が経済成長の障害となっている。
電力不足と物流危機が企業活動を制約し、失業率は30%以上です。計画停電の回避で若干の改善が見られ、南アフリカ準備銀行は利下げを検討中です。ランド相場も底入れの兆しを見せています。新政権の経済政策に対する投資家の見方は慎重ながら楽観的で、今後の焦点は経済成長と高い失業率・格差の解消です。 - 金価格
- 2018年は春先から夏場にかけて米ドルが上昇する中で金価格が下落。
ランドは金価格とともに大きく下落した。
<特別レポート> 南アフリカランド 押さえておきたいリスク

ここ数年、南アフリカ経済は慢性的な電力不足により、幅広い経済活動は制約を受けてきた。しかし、昨年以降は計画停電が回避されており、最悪期を脱しつつあるとみられる。他方、運輸インフラの運営は引き続き不安定な状況が続いており、経済活動を巡る制約要因がすべてクリアされている訳ではないことに留意する必要がある。さらに、米トランプ政権は同国の土地政策を理由に圧力を掛けており、USAID(米国際開発庁)閉鎖による支援事業の停滞も重なり、経済活動の足かせとなることが懸念される。その一方、米トランプ政権の関税政策を巡る混乱が世界経済の不透明要因となるなか、金価格は最高値を更新しており、ランド相場を下支えするなど実体経済の動きと乖離する展開がみられる。先行きも金価格の動向がランド相場を下支えする可能性はある一方、実体経済は他の新興国と比べて勢いの乏しい動きが続くとみられ、経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の脆弱さにも引き続き注意を払う必要がある。
執筆:2025年4月22日
マーケット情報
- はじめに
- 人民元相場は、中国当局の意向に大きく影響される。
中国人民銀行が定めるレート水準に収まるよう誘導されており2019年には米国が「為替操作国」に認定した。
実際、2015年に人民元の切り下げが行われたことが「チャイナショック」として世界に広まり、為替に限らす株式相場などがリスクオフとなった。
リスクとして意識したいのは以下のとおりである。 - 政治
- 中国共産党による一党独裁で政治が統制されている。
中国人民銀行による管理相場制となっており、急な方針変更が元レートのトレンド変化に直接かかわることがある。 - 経済
- 中国経済は2024年にはGDP成長率が4%を超える見通し。これにより、世界経済に大きな影響を与え続けてる。しかし、目下は中国の景気減速や不動産市場の不安定性がマーケット全体を揺るがすリスクが存在している。さらに、米中貿易摩擦が再燃し、関税引き上げの応酬がはじまる場合は懸念材料になる。
<特別レポート> 人民元 押さえておきたいリスク

中国は、今春開催した全人代(全国人民代表大会)で今年の経済成長率目標を「5%前後」に据え置いた。一方、米トランプ政権は中国に対する追加関税を含め、相互関税を合計145%に設定し、中国も米国に対する関税を125%とする報復に動いた。結果、貿易戦争は一段と激化している。高関税の影響で米国向け輸出の下押しが避けられないなか、中国当局は内需喚起を通じた景気下支えによって成長率目標の達成を目指している。しかし、不動産不況や、若年層を中心とした雇用回復の遅れが個人消費の足かせとなっており、今後も耐久消費財の買い替え促進や設備更新促進など政策支援に依存する状況が続くと予想される。金融市場では、昨年秋以降の金融政策のスタンスが「穏健」か「適度に緩和的」に転じたこともあり、人民銀行が一段の金融緩和に動くとの見方が根強い。しかし、当局は金融緩和を契機にした人民元安の加速を警戒しており、当局がどの程度人民元安を容認できるかが、今後の人民元相場を左右する重要な要素になる。人民元相場は大きな動きの乏しい展開が続く可能性に留意する必要がある。
執筆:2025年4月22日
マーケット情報
- はじめに
- ロシアルーブル相場は、原油価格の動向に影響を受ける傾向がある。
リスクとして意識したいものは以下のとおりである。 - 政治
- 1991年、ソ連邦が解体し、ロシア連邦として成立した。
ウラジーミル・プーチンが2000年に大統領に就任し、以降長年国のトップとして統治している。
なお、現時点で大統領の任期は2024年までとなっている。 - 経済
- 2000年代初頭にはBRICsの一翼として注目された。2018年の名目GDPでは世界12位に位置している。しかし、クリミア半島の併合やシリア内戦への介入など、軍事力を使った強権によりEUやアメリカから経済制裁を受けており、経済成長は鈍化傾向にある。
- 原油
- 世界有数の原油輸出国であり、2000年第初頭からのエネルギー価格の高騰は、外貨準備高を積み上げることに繋がり通貨の安定に寄与した。一方で2014年半ばから下落した原油価格の影響で、2015年はロシアの実質GDP成長率が-3.7%を記録するなど、良くも悪くも原油価格の動向に左右されやすい。
<特別レポート> ロシアルーブルのリスクを点検

ルーブル相場は、ロシアによるウクライナ侵攻を機に欧米などが制裁強化に動いたことを受けて大きく調整した。しかし、その後はルーブル安阻止に向けた中銀による大幅利上げのほか、資本規制や強制的な外貨売却要請の動きに加え、ルーブル需要喚起に向けてすべての貿易決済をルーブル建で行うことを求めるなどの動きも重なり、足下のルーブル相場はウクライナ侵攻前の水準を上回っている。他方、足下のインフレ率は欧米などの制裁強化を受けて大きく上振れしているものの、中銀はルーブル相場の安定も追い風に断続的な利下げに動くなど、景気下支えに舵を切る動きをみせる。外国人投資家の事実上の締め出しという特殊環境がルーブル相場の安定を促しているが、ウクライナ問題は先行きが見通せず欧米などが制裁緩和に動く可能性は低い。よって、仮に資本規制が解除されれば外国人投資家の「売り圧力」が顕在化するなど、ルーブル相場を取り巻く環境が一変するリスクはくすぶる。
執筆:2022年6月14日